<てい談>「このは」園舎改修

設計者と園長がビフォー、アフターを語る。

  • 井上寿  ㈱Integral Design Studio
  • 戸張麻美 ㈱新中央設計東京
  • 小熊悦子 このは園長

井上:改修した園舎で実際に生活されて、どうですか。

園長:照明が直接照明から間接照明になったのはとっても良かったなと思います。子どもが仰向けに寝ると、以前は光源の光が直接目に入る。0歳の寝ている赤ちゃんなどは、上を見ますからね。それが間接照明になって、光が直接目に入ることがなくなった。やさしい光がうれしいですね。

幼児の部屋も柔らかい光の間接照明。天窓からは自然光も。

井上:床は柔らかい木を使いましたが、使ってみてどうですか。

園長:木の硬さもいろいろなんですね。これは柔らかくてやさしい。木の節が床のあちこちに見えるところが、またなんともぬくもりがあっていいですね。見学に来る方が「入ってくると木の香りがしますね」と、皆さん、おっしゃってくださる。

井上:そうなんですよ。中にいると慣れてあんまりわからないかもしれませんが、外から入ってくると木の香りがするんです。
園舎の環境が変わったことで、子どもたちの行動に何か変化はありましたか。

園長:子どもたちの目線を大事にして、ドアの下方に、子どもが床にすわったときに外が見える窓を作ってくださったでしょ。1歳児クラスの子どもたちはここが大好きなんです。玄関に入ってくる人や出ていく人が見えて面白い。場所の取り合いをして楽しんでいます。子どもたち、時々窓の木の縁をかじったりしてね、「おやおや、ねずみさんがたくさんいるね」なんて、大人もそんな風景を楽しんでいます。

ドアの下の窓の内と外で生まれる、言語によらないコミュニケーションが面白い。

井上:階段は以前とは位置も姿も大きく変化しましたが、どんなふうに使っていますか。

園長:0歳さんがはいはいでの階段上りを楽しんでいます。今はコロナ禍のため、上まで上がらないようにしていますが、コロナが去ったら、もっとこの階段を面白い場所にできると思ってます。

戸張:大改修をしたわけですが、最初は最低限の改修をするような話で始まったんですよね。

井上:そう。0歳の部屋に調乳室がなかったので、なんとかしたい‥‥と。

園長:そこから、「食」を大事にしたいから給食室を真ん中にもってこれたらいいね。お昼が近づいてくると園内がおいしい匂いに包まれて‥‥と、そんな職員たちのイメージと話がどんどん膨らんで、本当にそうなった。そして、0歳児室は給食ワゴンが通らない落ちついた部屋になりましたし、加えて、寝転んだり、はいはいしたりが心地よい、畳のコーナーもできました。

職員みんなの希望や意見が、計画案に反映され、設計図になり‥‥。完成しました。

戸張:既存の建物の改修ですから、構造がわからないところが多くて、開けてはその都度構造計算のし直しをしてもらって‥‥。短期間で本当によくやったなという感じですね。

園長:期間が決まっている中で、皆さん、頑張ってくださって‥‥。保育園は休みがないでしょ。私たちも3月31日の夜中までかかって改修園舎で子どもたちを迎える準備をしました。そして今、保育士たちはこの園舎をどんなふうに使って子どもたちの生活を楽しく豊かにしていこうかと、日々、知恵を働かせ、工夫をし、ワクワクしながら取り組んでいます。