第 八 話

等々力保育園の民営化に手を上げて

21世紀を迎え、保育園を利用する父母の状況もいつしか変わってきました。専門職をもつ女性が増え、子どもが生まれても働き続ける人が増えました。産業構造が変化し、雇用形態にも変化が生じ、働き方の多様化が進行しました。そんななか、保育園もまた大きな「変化の時代」を迎えていました。

保育園に入りたくても入れないという「待機児問題」は大きな社会問題となりました。また、延長保育や休日保育など、保育ニーズも多様になり、それらのニーズに対応する保育のあり方も求められていました。そこで世田谷区は、公立園5園を民営化し、休日保育や夜10時15分までの延長保育などの先端ニーズに応えていく保育園としてそれらを位置づけ、多様な働き方に対応していこうという方針を打ち出しました。

夏はやっぱり水遊び。そして泥んこ遊びへ。子どもたちの遊びはどんどん発展します。

ちょうどその頃、鳩の森保育園は創立から50年を経て、ベテラン保育士もたくさんおり、保育の現場でも理事会でも、「深刻な社会問題となっている保育ニーズに、社会福祉法人として私たちも応えるべきではないか」「困っている親たち・子どもたちの現実に、私たちも力になれるのではないか」と、そんな議論が起こっていました。

世田谷区から等々力保育園の民営化が提起され、それでは‥‥と公募に手を上げると、思いがけず話がトントンと進み、等々力保育園は2008年から代々木鳩の会が運営主体となることになったのです。

広い園庭で大縄跳び。1人ずつ次から次へと切れ目なくどこまで跳べるかなと、年長児たち。

等々力保育園は東急大井町線の九品仏駅から徒歩10分ほどの穏やかな住宅地にある100名規模の保育園です。建物も園庭も公立園のまま、子どもたちもそのまま、名前も等々力保育園のままで、2008年度から代々木鳩の会に運営がバトンタッチされることになりました。

とはいっても、子どもたちにとっては環境の大事な要素である人的環境、つまり保育士たちが入れ替わるのですから、これは重大事です。そしてまた、とってもデリケートな問題です。2007年度の途中から公立の保育士たちと代々木鳩の会の保育士たちとがダブルになる形で保育を進め、公立の保育を継承する形で移行をなし、子どもたちにとっても保護者にとっても負担や不安のない形を話し合い、探りながら、滑らかなバトンタッチを心がけてスタートしました。

みんなで育てているザリガニ。「ごはんは何を食べるの?」と調べ、研究者にもなる子どもたち。

運営が変わった等々力保育園は、世田谷区との約束に基づいて、4時間延長保育と休日保育にも取り組むことになりました。等々力保育園は商業地である自由が丘も徒歩圏内です。保護者には商店を営む人も少なくありません。夕方から夜間は猫の手も借りたいくらいという商店家庭もあります。日曜日はお父さんもお母さんもお店に出るという家庭もあります。

休日に働くのは商店で働く人だけではありません。医療従事者など、休日出勤も夜間勤務もある仕事に就いている人もいます。そうしたお父さん、お母さんたちのさまざまな働き方と向き合い、「大丈夫ですよ」と大きな安心感も提供できる保育園として、代々木鳩の会の等々力保育園は歩みを始めました。

そして年を経ること12年。子どもたちと一緒に等々力保育園の保育をつくってきました。今、等々力保育園は、地域の保育園として、なくてはならない存在となっています。

手押し車にお風呂マットを敷いて、他の子を乗せて‥‥。子どもは遊びづくりの達人。