第 十 話

「岡本こもれび保育園」が誕生

2014年4月、世田谷区にもう一つ、代々木鳩の会の保育園が誕生しました。「岡本こもれび保育園」です。このころ世田谷区は、保育園を増設しても、また翌年には待機児が増えているという状態で、まだまだ保育園建設が求められていました。そこで、代々木鳩の会は、世田谷区にもうひとつ園をつくることにしたのです。定員100名の園です。

世田谷区の岡本は、静かな住宅地です。近くには広大で緑豊かな砧公園があります。保育園は小高い丘の上というような位置にあるので、広い空と共に砧公園の豊かな緑の連なりが見渡せます。

大きな緑が、子どもたちをやさしく迎え入れてくれる砧公園。空気がおいしい。

砧公園は、子どもたちの毎日の散歩にほどよい距離です。天気のよい日の午前は、のびのびたっぷり活動できる緑のこの空間。都内ではなかなか得難いものです。

園舎は2階建て。1階にはゆったりとしたランチルームがあり、3歳以上児がここで食事をします。ランチルームの端の階段下のスペースには絵本コーナーがあり、食事の後には、くつろぎながら絵本を広げる子どもの姿もあります。

静かな住宅地によく似合う、穏やかでゆったりしたたたずまいの園舎です。

園庭の一角にはプールがあり、夏はここが大賑わいになります。そして園庭の端には小さな菜園もあります。種まきから収穫まで育てるのはもちろん子どもたちですが、近くの農家の方も子どもたちに力を貸してくださるとのこと。世田谷らしい地域性がうれしいですね。

新設園ですから、職員たちは若さいっぱい。意欲も元気もいっぱいです。議論をし合い、考え合い、新しいことにもどんどんチャレンジし、園づくりをしてきました。父母の協力もあります。プロのお父さんが子どもたちにクッキング指導してくださることも‥‥。こんなふうにみんなでつくってきた園です。

広々として開放感のある幼児の部屋。

こうして年月を経て、卒園児もたくさん送り出してきました。地域に根を下ろし、地域活動をとおして触れ合う中で、園に信頼を寄せる人も多くなってきました。そんな中、「一時保育はやっていないのですか」という地域のお母さんからの問い合わせが多くなってきました。

実は、園舎建設時から一時保育は実施の予定に入っており、専用の保育室も用意していたのですが、まずは通常保育を軌道に乗せてからということで、取り組みには至っていなかったのです。

寄せられる一時保育の問い合わせに対応する中で、さまざまな事情で保育を求めている人がいる社会の実態が見えてきました。「上の子が病気で、しばらく通院が必要になったんですが、下の子を連れて通院はできないので、保育先を探しているんです」とか、「保育園に入れなかったので、なんとか週3日だけでも、仕事のある日の保育をしてもらえないだろうか」など、切迫した事情を抱える人も少なくありません。

そこで、2020年7月から専任保育士を置き、一時保育事業を始めました。地域の親子の安心の場が、ここ岡本の地にもうひとつできたというわけです。